なら歴史芸術文化村が実施している滞在アーティスト誘致交流事業「文化村AIR(アーティスト・イン・レジデンス)」にて、滞在アーティストが決定しました。
2026年度滞在アーティストは、彫刻家の西岳拡貴さんです。以下のアーティスト・ステートメントが公開されています。
<アーティストステイトメント>
私は、物質の表層や環境に残る痕跡に触れ、境界と時間を再構成することをテーマに制作している。物質の傷や変形、場所に堆積した記憶、⾃然光の移ろいなど、普段は⾒過ごされ、明確な形を持たないものに関⼼を向けてきた。対象を観察し、既存の意味や関係をいったんほどき、彫刻、写真、⾔葉、⾳、映像、⾏為へと移し替える。それは不可視のものを単に可視化するのではなく、⾒慣れた現実を再構成し、その意味や価値を捉え直す試みである。私は完成した成果物だけでなく、対象を発⾒し、変換し、現実のなかに置き直すまでのプロセスを制作として捉えている。そこに⽣じるずれや偶然を受け⼊れながら、形にならない記憶や消失しゆく時間に宿る「不合理な美しさ」を掬い上げようとしている。
今年度も風間が審査員の一人として関わり、今回の審査にあたり以下のコメントを寄せました。
今年度も審査に関わらせていただくなかで、奈良という土地の歴史や記憶、環境、あるいは素材に新たな目を向ける魅力的なプランを多数受け取りました。くわえて、文化村AIRのプログラムでは、地域との交流につながるプランを重視している特色があります。限られた滞在期間において、制作や展示にむけて、地域の人たちの話を聞くといったリサーチは数多くありますが、作家が取り組もうとすることや作品にとって地域の関わりがどこまで必然性をもっているのか、「参加」のあり方がどのように考えられているのかに、今年度は目を向けました。
西岳拡貴さんのプランは、触れ⽅や⽀え⽅によって変形・破損する、移動の難しい彫刻を制作し、その保存と搬⼊を地域の方々に委ねるというものでした。「運ぶ」という、通常は保存修復や展示などの裏側で黙々と行われる行為そのものを、参加の中心的な枠組みとしているのが印象的でした。壊れやすい作品をどう支え、どう梱包し、どのように会場まで運ぶか、その一つひとつのアイデアや判断において人々の創造性が喚起され、そして運ぼうとする身体の動きがある種の緊張感を帯びたパフォーマンスとして立ち上がる可能性も妄想できました。
限られた滞在期間において、どこまで地域の方々の継続的な関わりをつくれるのかには課題もあるかもしれません。それでも、これまでにはなかったかもしれない出会いや関わりが生まれ、アーティストにとっても今後の制作や創造性を深めていく契機となることを願っています。
風間勇助(奈良県立大学地域創造学部講師)
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昨年度(2025年度)「なら歴史芸術文化村 アーティスト・イン・レジデンス事業の記録冊子に寄稿しました」
