オーストラリアで、刑務所にいる人々に向けたアート雑誌をつくっているアーティストのダミアンさん(Damien Linnane)さんが来日していたため、お会いしました。日本の刑務所における創作環境や刑務所のアートについて意見交換ができました。
ダミアンさんは、Paper Chained という団体で雑誌をつくっており、オンラインでWebサイト上からも閲覧できます。刑務所にいる人々から届く作品を掲載するほか、世界中の刑務所アートを集めた展覧会も過去に実施されたそうです。そこで、日本の作品はあるかを聞かれたという次第です。

ダミアンさんから、第3回刑務所アート展の応募作品を次の雑誌の表紙にしたいという提案をいただきました(下の写真中央の作品)。

なお、ダミアンさんは、5月26日まで実施中の第3回刑務所アート展のクラウドファンディングに、次の応援メッセージを寄せてくれています。
アートは、私自身が刑務所生活を送っていた当時も大きな支えの一つでした。アートを創造する行為には、心を癒し、人生を変え、社会復帰を支える驚くべき力があります。この素晴らしい展覧会を企画してくださったことに、心から感謝しています。この展覧会は、アーティストたちだけでなく、私たちコミュニティにとっても大きな意味を持っています。
Art was one of the main things that helped me get through my own prison sentence. Making art has an incredible power to heal, change lives, and assist people in their reintegration back to society. Thank you for putting together this incredible exhibition. It really makes a difference for both the artists and the community.
ダミアンさんが来日されてお会いした日は、「刑務所ラジオ」の収録日でした。「刑務所ラジオ」は、NPO法人監獄人権センターの塩田祐子さんがパーソナリティーをつとめ、元受刑者の方や社会復帰をサポートする人などをゲストに、ラジオフチューズのコミュニティラジオとして放送しています。

風間はこの刑務所ラジオの出演が今回で3回目。刑務所アート展の開催時期にあわせて、作品の一部をこのラジオで毎回紹介しています。紹介にあたっては、刑務所にいた経験をもつクマさんが、作品にこめられている思いを当事者として解像度高く受け取っており、その解説も見事です。
ダミアンさんは出演されていませんが、せっかくだったので記念写真を収録のスタジオでぱしゃり。

放送は終わってしまいましたが(アーカイブはなし)、とてもいい放送になりました。

※ダミアン・リナーンさん、プロフィール
ダミアン・リナーンは、オーストラリアの作家、イラストレーターであり、刑務所にいる人々に向けた無料の文芸雑誌『Paper Chained』の編集者。
ダミアンは2015年末から10ヶ月間、オーストラリアの刑務所に収監された経験をもつ。刑務所ではセラピーやリハビリテーション、教育も受けられないと告げられ、彼は時間を有意義に過ごすため、執筆とアートに没頭した。彼の最初の著作『Scarred』(Tenth Street Press、2019年)は収監中に手書きで執筆され、完成後、独学で絵を描く技術を習得した。彼の作品はシドニー、ブリスベン、ニューヨーク、サンフランシスコなどで展示され、書籍『This is Ear Hustle』(Crown Publishing、2021年)のイラストレーターも務める。
オーストラリアの刑務所内では創造的な表現の場が不足していることに気づいたダミアンは、2017年に創刊された刑務所雑誌『Paper Chained』に参画し、2021年に編集長に就任した。
『Paper Chained』は現在、オーストラリアの刑務所に収容されている1万4,000人以上に配布されており、世界中の収容者からアートや文章を寄稿している。2024年、ダミアンはオーストラリアで初めての国際刑務所アート展を開催し、8カ国25の刑務所から100点を超える作品が展示された。彼は今後、日本の刑務所アートプロジェクトへの関与を拡大したいと考えている。