タツルハタヤマ展示「ココの顔」at platform3(東中野)

東中野にある独立系書店 platform 3 で、タツルハタヤマ展示「ココの顔」(キュレーション:カジェタノ・リモルテ)が、2025年2月8日〜2月y23日まで開かれています。会場で、リソ刷りで配られているコンセプトペーパーの翻訳をほんの少しだけ手伝いました。

スペイン出身のトランス・クィア活動家で哲学者のポール・B・プレシアドの著書『あなたがたに話す私はモンスター』(法政大学出版、2022年)の引用から、スペインの画家ゴヤも描いた「ココ」、秋田のナマハゲ、タツルハタヤマの絵へとつないでいきます。

プレシアドは、従来の精神分析や精神医学がトランスジェンダーの人々を「檻」に閉じこめてきたことを告発し、精神分析業界にケンカを売り、「モンスター」の意味を革命的に肯定しました。いわく、「モンスターとは、 転換(トランジション)のなかで生きる者」であり、「その顔、その身体、その実践が、既定の知や権力の体制のなかではいまだ真とみなされえない者」であると。

ココは、スペインで語られる顔のない怪物で、子どもに言うことを聞かせるために脅かす存在、日本でいうナマハゲみたいなものらしい。

フランシス・デ・ゴヤの版画作品《Que viene el coco, Lu 》
フランシスコ・デ・ゴヤ《Que viene el coco, Lu》1799

ココ=怪物(モンスター)の存在によって、規範化されていく子どもも多いが(男らしくなりなさい、女らしくなりなさい、権力には従いなさい、さもないとココがきますよ、と)、もしかしたら、ココと友達になれる子どもたちもいるかもしれない。親のいないところで。タツルハタヤマのドローイングがその世界に誘ってくれます。

フーコー的にはこの〈怪物〉は〈犯罪者〉とも置き換えられそうだし、「受刑者はモンスターではない」と語られるのは、それはその通りなのですが、プレシアド的には、「喜んでモンスターになろう、転換(トランジション)し続ける者として」ということになるのでしょうか。

あるいは、1993年にノーベル平和賞をとっているネルソン・マンデラが2008年まで米国のテロ監視リストに入っていたことでも知られる通り、〈テロリスト〉もまた「既定の知や権力の体制のなかではいまだ真とみなされえない者」で、パレスチナ解放を呼びかけるDANNY JINさんは「喜んでテロリストになろう」とも語っていたことを思い出します。

モンスターをめぐるイメージは、忌み嫌われる者、それゆえに欲望される者、スペクタクルに晒される者ですね。それを引き受けることはとても勇気のいることです。今のこの世界では。

*参考

<書評>『あなたがたに話す私はモンスター 精神分析アカデミーへの報告』ポール・B・プレシアド 著:東京新聞デジタル https://www.tokyo-np.co.jp/article/233117

ポール・B.プレシアド 『あなたがたに話す私はモンスター』 訳者あとがき(藤本一勇)|法政大学出版局◉別館https://note.com/hup/n/nb22d9e6f3d6b?sub_rt=share_b

こんな本屋を待っていた、東中野に独立系書店「プラットフォーム3」が誕生 https://www.timeout.jp/tokyo/ja/news/platform_3-101724

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