【出張報告】台湾にて研究発表、視察をしてきました

2024年12月27日〜30日にかけて、台北市(台湾)を訪れ、各所で研究発表やネットワークミーティングに参加してきました。

台日交流フォーラム(Taiwan and Japan Exchange Forum: Inclusive arts and the curation aesthetics of museums)

日時:2024 年 12 月 27 日(金)、13:30-19:00
会場:国立台湾芸術大学 藝術管理與文化政策研究所 簡報室
Venue: the meeting room in our graduate institute in National Taiwan University of Arts
主催:中川 眞(大阪公立大学特任教授)
殷寶 寧(國立臺灣藝術大學藝術管理與文化政策研究所 教授)出席者

初日は、国立台湾芸術大学でひらかれていたフォーラムに参加しました。台湾及び日本の研究者や実務者が集まり、美術館などにおけるアートへのアクセシビリティや社会包摂的なプロジェクトについて報告を行い、ディスカッションをしました。アートにアクセスできている/できていないのは誰か、台湾・日本ともに共通の課題を探る議論になりました。社会包摂的な取り組みにおいて、抑圧を抱えていたり排除されたりしている当事者が中心に置かれることの重要性が共有されていたように思います。

フォーラム後には、国立台湾芸術大学の殷(イン)先生のご案内でおいしい台湾料理を堪能しました。

フォーラム 「Inclusion in art productions, art spaces and arts management」

日時:2024 年 12 月 28 日 10:00-13:00
場所:牯嶺街小劇場/Guling Street Avan-garde Theatre
コーディネーター:Jennifer LEE(Mekong Cultural Hub Program Manager)

2日目は、Mekong Cultural HubのProgram Managerのジェニファーさんのコーディネートにより、台湾及び日本の研究者や実務者が集まり、アートマネジメントにおける社会包摂的な視点をもった取り組みや研究について、報告やディスカッションを行いました。

初日のフォーラムが美術館などの事例が中心であったのに対して、舞台芸術における取り組みについての報告が多くありました。というのも、会場となったのは牯嶺街小劇場という舞台芸術の拠点でした。この劇場は、日本統治時代に警察署であった建物を活用し、その歴史を伝えるパネルなどもありました。

風間は、静岡文化芸術大学の南田さんとともに「How can people become conscious of someone’s ‘moya – moya’ (the difficulty of life) ?(人々はどのようにしてもやもやに気づくことができるのか)」という題で、この2年取り組んできたAnti-Oppressive Practice(反抑圧的実践)のレクチャーやワークショップをしてみての困難について話しました。

アートプロジェクトKeelung Project 視察

日時:2024 年 12 月 28 日(土) 14:00-18:00
場所:基隆市(台北から車で約1時間)

2日目の午後は、台湾の北の端にある港町の基隆市にて国立台湾芸術大学の殷(イン)先生のご案内でアートプロジェクトのいくつかの拠点を視察させてもらいました。廃墟に近いような屋根もない建物スペースを再利用して、アーティストによる展示や人々が集まれる場所となっていました。

ネットワークミーティング 三明治工 Sandwishes Studio

日時:2024 年 12 月 29 日(日)14:00~18:00
会場:台北市政府身心障碍服务中心
ホスト:
・Hang Li(三明治工 Sandwishes Studio 共同設立者)
・Jo Lin Hsieh(三明治工 Sandwishes Studio 共同設立者)

台湾出張3日目の最後の訪問先は、「三明治工 Sandwishes Studio」でした。「三明治工 Sandwishes Studio 」は、アートの創造性&デザインの力をつかって、社会的に取り残された人、困難な状況にある人たちに寄り添えるような福祉的観点をもったプロジェクトを多く行っている台湾のデザインスタジオ。

共同設立者の Hang Li さんと、Jo Lin Hsieh さんにより、障害のある人やホームレスの状況にある人、性的マイノリティなど、社会との間に障害を抱えるさまざまな人を中心に置いた多くのプロジェクトを紹介いただきました。福祉とデザインをつなぐユニークな活動は、日本の取り組みにも多くの示唆があったように思います。

台湾ではアクセシビリティの問題やインクルーシブな活動に対しては、近年になって社会的な関心が高まってきていて、公的な美術館・博物館あるいは現代作家たちの関心は限定的かもしれない、といったことも伺いました。

アートとしてのクオリティや評価というよりも、権利を求めるものとして、あるいは現状ある不平等を解消していくことを目指した活動とのことでしたが、展示やワークショップの様子を写真で見る限り、もう十分興味深いものでした。

旧台北刑務所遺構

日時:2024 年 12 月 30 日(月)11 時~13 時
会場:旧台北刑務所遺構

旧台北刑務所跡地は、その歴史資料を残した展示室とともに、建物をリノベーションしてできた複合文化施設が立ち並ぶエリアとなっていました。

旧台北刑務所は日本統治時代に建てられたものであり、その設計者は日本の旧奈良監獄と同じ山下啓次郎のものであることを説明する展示室がありました。

かつて旧台北刑務所に収容された者の中には、第二次世界大戦終戦直前に、日本軍がアメリカ空軍兵を撃ち落とし収容していた兵士も含まれ、その歴史が残されていました。監獄跡地の利活用は今後日本でも議論されてほしい課題のひとつです。

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